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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
「珍らしいことでございませんな」
「そこで俺はその女を、専有しようとかかったのだ」
「成功なされたでございましょう」
「もう一歩だった。もう一歩だった。ところがそこへ邪魔物が出た」
「惜しいことでございました。いったいどういう邪魔物で?」
「俺の娘が出て来たのさ」
「ははあなるほど、お姫様が」
「刺繍を俺へ見せようとしてな。で、俺はその刺繍を、どんなに呪ったかしれない。……だが姫は俺の唯一の苦手だからな」
「やれやれお姫様が出て来られて、ホッと私も安心しました。そこへお姫様が出なかろうものなら、相手を専有した経緯を、いずれ殿にはこの私へお話しなさるでございましょう。聞き手にとってはいい迷惑で。……いや実際お姫様は、よいところへおいでくださいましたよ」
「俺にはあんまりよくなかった。恐ろしくムシャクシャしたものさ。姫奴、さっとその女を、自分の部屋へ連れて行き、俺の自由にさせなかったからな。……俺の心機は一転した。美の陶酔を振り払い、功利的に用いようと決心したのさ」
ここで城主は舌なめずりをした。
「山津主これでも解らぬかな?」
「さよう」と云ったが山津主は、変に曖昧な表情をした。