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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

「社務所も灰にされましょう」

「おや」とこの時水藻が云った。「誰か馬に乗って参りますよ」

麒麟山の方角から、一騎の武者が駈けて来た。湖水の岸で馬から下り、手綱を曳きながらやって来た。

それは麗人の一人であった。服装によって知ることが出来た。他ならぬそれは米主であった。社務所の方へ近寄って来た。

二人の巫女は吃驚りした。ここは緩衝地帯であって、岩石人でも獣人でも、高尚を誇る麗人といえども、入り込むことは出来ないことに約束されてある土地だからであった。

二人の巫女はつと進んだ。咎めるように水藻が云った。

「お見受け致せば麒麟山の、麗人のお方と思われますが、どういうご用で前令もなく、ここへおいででございます」

「されば」と米主は愛想よく笑った。「実はお助けに参りましたので」

「それはまた何事でございますか?」

「承われば岩石人ども、勾玉管玉を盗みましたとか、これは事実でございましょうな?」

二人の巫女は顔を見合わせた。

「はい、本当でございます」心配そうに水泡が云った。

「それを取り返して差し上げましょう」

二人の女はまたそこで、互いに顔を見合わせた。

「それはそれはご親切に、まずお礼を申し上げます」