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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页
、田沼様より我が君に対し、該九十郎を召し抱えるよう直接言葉添えありましたため、我が君この儀いかがのものかと、数人の侍臣に計らいましたところ、我が父押し切って異議申し立て、邪道の剣を得意とするは、心に邪まある証拠でござる、召し抱えご無用と申しましたれば、我が君にもその儀よかろうと、それとなくお断わりいたしました。しかるに九十郎このことを聞き知り、我が父を怨みお茶の水にて、討ち果たしましてござります。……わずかながらも我が家に止宿し、いわば食を食みたる九十郎、其奴に討たれしは下世話に申す、飼い犬に手を噛まれしも同然、無念残念と母をはじめ、兄範之丞も歯噛みいたし、復讐とげんと致しまして、九十郎の行方たずねましたところ、大胆と申そうか不敵と申そうか、遠く他国へ走ろうともいたさず、田沼様にいよいよ取り入って表面ての家臣となり、名を平戸九十郎と改め、同気求むる浪人を集め、田沼様警護にあたりおりますよし。これにはわが君もことごとく怒られ、田沼様方へ該九十郎を、お引き渡しくだされいと申し入れましたるところ、そういう名の武士当家におらねば、人違いでござろうと取り合わず……」