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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页

青空文庫

七

「小綺麗な若衆が出て来ただろう、あいつも賊で新助という」

「…………」

「わしの部下、相棒だ」

「奇矯におわしますあなた様ゆえ、どのような市井無頼の徒を、お手なずけ遊ばしても熊太郎、何んの不思議とも思いませぬが、しかし盗賊とありましては……」

熊太郎は苦々しく率直にいった。

が、冬太郎は磊落に、

「止めているからよいではないか」

「は、しかし……しかしながら……」

「まあ、よいよい」と冬次郎は、懐手をしたまま鷹揚にいった。

「それにしてもさすがは戸ヶ崎、勘助の女装よく見破ったな」

「何んでもない儀にござりました」

「それに反してあの勘助、江戸で名高い戸ヶ崎熊太郎を、知らなかったとは迂濶な奴じゃ」

七

「ハッハッ」と冬次郎は笑ったが、「他出から帰って来たわしに向かい、その勘助めこういうのじゃ――昨夜我々が決行しました事件を、二人の武士が下谷の往来を、批評がましく噂しながら通る、片腹痛く存じましたので、前へ廻って笑ってやりましたところ、後を尾行けて参りました。そこで屋敷へ誘き入れ、奥の座敷へ通し置きました。田沼あたりの廻し者、……ではあるまいかとも存ぜられます、とな。そこでわしは隙見したのさ」