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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页
三
三
「そのように私も承りおります」
「阿蘭陀好みの源内のことだ、寒暖計器や、震雷験器や、そんなものを発明した才能で、今度の屋敷も造ったのであろうが、造らせた田沼はその屋敷へ、何を住ませようとするのであろう?」
冬次郎はこういうと貝十郎の顔を、窺うようにじっと見詰めた。
見詰められても貝十郎は、我不関といったように、さも何気なくアッサリといった。
「あの仁のことでございますから、美しい女子に阿蘭陀衣裳でも着せて、住まわせるのでござりましょうよ」
「そうではあるまい」と冬次郎はいった。「そのような屋敷を造らせた田沼、何んでそのような平凡のものを、そのような屋敷に住まわせようぞ」
「ではいったいどのようなものを? ……」
「どのようなものを住まわせるか、それを知るのがそちの役目――与力のそちの役目ではないか!」
「御意。……しかし、私としましては……ただ今申し上げましたように、阿蘭陀衣裳を着せた女子ぐらいを……」
「違う!」と冬次郎は歯痒そうにいった。「人ではなくて物であろう!」
「…………」
「長崎の大通辞吉雄幸左衛門や、甲必丹蘭人カランスなどから、舶来の珍器を献上させたというが、その中には兵器や戎器……鉄砲や大砲や洋刀もあろう、毒薬もあろう媚薬もあろう、拷問機械、貞操帯、罪人に冠せたという驢馬仮面、そういうものもあるであろう