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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页
十四
「…………」
「その風まるで男じゃアないか」
「ナールほどね」
「それがもう悪い」
「…………」
「女がそんな返辞をするか」
「あ、なるほど、それじゃア『あい』」
「行きな」
「あい」
「アッハッハッ」
勘助の姿の見えなくなった時、気絶から甦生ったお吉を肩に、九十郎がさすがに取り乱した姿で、門口まで来たが貝十郎を見ると、
「お、これは十二神様!」
驚き呆れ当惑したようにいった。
「どうなされた平戸氏」
貝十郎も少し呆れていった。
「いや酷い目に逢いましたよ」
いったが九十郎は貝十郎の背後に、織江が立っているのを見て、再度驚き当惑したようであった。
十四
田沼殿のお手へ渡さなければならない、その織江を自分の妾宅へ、止めて置いたのを貝十郎のために、発見されたということが、九十郎には痛かった。それで当惑したのであった。
そういう心持ちを見すかされまいと、九十郎は忙しくいった。
「いや隣りの化物屋敷で、まこと酷い目に逢いましたよ。これが化物、ままごと狂女の、お浦という奴に斎をやろうと、膳を持って参りましたところ、女やら男やら見当のつかない、変な奴が飛び出して参り、これを一あてあてましたそうで、……」