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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页
九
城内の混乱に打ちまぎれ、うかうか城外へ出たらしい。
(もしものことがあろうものなら、取り返しのつかないことになる)
これという目標もなかったが、探し出すために貝十郎は、こうして城を出たのであった。
城外も恐ろしい混乱であった。人々が右往左往していた。
と、一人の町娘へ、貝十郎は眼をつけた。
九
(勘助に似ているが? 女勘助に!)
貝十郎はそう思った。
塩尻の社家主計の屋敷で、一旦勘助を捕えたが、大して憎くない男だったので、覚蔵の家の内土蔵の中へ、冬次郎様と熊太郎とを、翻弄的に閉じこめておいて、主計方へ帰って来た貝十郎は、その夜勘助を追い払った。
その勘助の娘姿が、群衆にまじって見えたのである。
(さてはいよいよ冬次郎様たちは、この城下へ来ておるな)
貝十郎はそう思った。
いずれは冬次郎様一行が、田沼を討とうお浦を奪おうと、自分たちの後を塩尻から追って、この小諸へ来ておるであろうとは、貝十郎は思っていたが、どこにどのように隠れ住んでいるものか、かいくれ消息がわからなかった。
ところが勘助を今見かけた。
ではいよいよ冬次郎様たちが、この城下に来ていることだけは、疑いないものということが出来る。