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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页
十六
「さすがは戸ヶ崎、心眼心耳、今に至って受け取れた! 曲者はいったに相違ない! ……この場の有様、曲者の所業じゃ!」
「それに致しても何と思って? ……おッ、殿々、お眼止めご覧ぜ! この脇差し! この脇差しは?」
「やア、郡兵衛の脇差しなるわ!」
「まさしく! 彼の仁出立の際差し代えました忍術衆特有の……」
「その脇差しじゃ、相違ない!」
「と致しますと曲者は?」
「うむ」
と熊太郎の顔を見た。
熊太郎は打ち案じたが、
「まさかに高阪郡兵衛殿が……ひそかに帰ってこのようなことを。……殿、どっちみちもう一追い!」
廊下が尽きると中庭であった。
松の幹に抜き身がまた刺してあった。
十六
中庭の奥にも一構えあり、構えの奥に内土蔵があったが、その前の闇に佇んで、十二神貝十郎は静まっていた。
手は合掌、足踏みひらいた、例の十全の構えであったが、眼で睨んだは土蔵の一所!
の呼吸極まり、
「阿!」
と発した。
ビーン!
瞬間音あって、土蔵の錠前自ずと外れた。
「桐島氏!」
「十二神様!」
出て来た伴作の耳に口あて、
「委細は後! ……聞くも話すも! ……即座に逃げろ、この方角から! ……冬次郎様、戸ヶ崎氏、あなたより今にも迫って参る! ……二本の刀で牽制はしたが。