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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页

青空文庫

目的語れ!」

「…………」

「窮鳥ならぬ窮鼠の彼、旅にて姦謀ことごとく整え、江戸へ帰らば電光石火、猫を噛まんの不軌断行! それを思えば是が非であろうと、道中にて田沼討たねばならぬ! かく決心した冬次郎じゃ! ……ヨーシ貝十郎田沼をかばい、あくまでわれに楯つく気な※(感嘆符疑問符、1-8-78) いわず語らぬ存念な※(感嘆符疑問符、1-8-78) ……今はこれまで是非におよばぬ、一人して十人百人にあたる、智謀の汝、田沼方にあっては、現在も将来も余にとって危険、惜しい人物器量ながら、従来の情誼断って討つぞーッ!」

抜き討ち!

紫電!

雪洞の燈を、瞬かせて袈裟掛け左の肩を!

が……

貝十郎の姿は消えた。

土蔵の奥より声があった。

「拙者を切らばままごと狂女、お浦殺すでござりましょう! ……二刻経ってわれ帰らずば、勘助ともどもお浦を殺せと、わたくし伴作に申しつけました。……かくなってはあからさまに、ことごとく申すそのお浦儀、将軍家後継者に関する件の、一大秘密持ちおりまするぞ!」

貝十郎の声であった。

十九

「何を汝! 何を申す!」

刀真っ向に振り冠り、暗々たる土蔵内に踏み入りながら、冬次郎は叱した。