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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页

青空文庫

おのれヤレどうあろうと今回こそはと、急き立つ心、湧く血潮! がいかんせん技量の相違、例によって次第に詰められ追われ、兄妹ながら退く退く!

「妹よ左から」

「兄上右から!」

「背後へ廻れ」

と声かけ合わせ、切っ先揃えて向かうものの、今はその太刀もしどろに乱れ、踏む足さえも覚束ない。

(衆人の見る前、よーし、こいつで!)

足を薙ぐの例の悪剣! こいつでバラバラ斬り落とそうと、臼杵九十郎肩を沈め、両手を下げて握った刀の、柄頭を膝へ引き附けたとたん、

「九十郎殿オーッ」

と群衆の中から、血を吐くような声が聞こえ、女が鞠のように飛び出して来、踏み出した九十郎の足へ縋った。

「わりゃアお吉! 退け退けお吉イーッ」

飛び出して来た女は群衆にまじって、うかうかここまで来たお吉であった。

「この足放さぬ、討たれてくだされ! ……私も死にます! ……すぐに後から! ……範之丞様、範之丞様、さあこの間に、本望とげて! ……」

「姦婦!」

怒声!

瞬間一閃!

「ヒエーッ」

左肩から胸まで割られた。

地に倒れてノタウチ廻る。お吉は無残唐紅!

その余勢で九十郎、血刀揮い範之丞眼がけ……

が、一刹那群衆の中から、