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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页

青空文庫

「田沼が道徳的に乱した社会を、越中守様が道徳的に直す、それだけでも意味があるよ」

「人間が社会を造るのか、社会が人間を産み出すのか、こうなりますると不可解で。……」

「反対の人間が交互に出て、社会を真っ直ぐに導いて行く。――ということはいわれそうだの」

「どこへ導くのでござりましょう?」

「とにもかくにも一つの成就へ!」

「成就に向かって流転して行く! ……というのが社会の真相で?」

「とそう思うとわしとしては、少くとも楽しく社会が観られる」

「が、成就がとげられました瞬間、もう崩れてさらに流転……」

「うむ、そうもいえるのう」

「と思いますと社会の相、悲しく観られますでござりますな」

「しかし第二の成就に向かって、流転を続けて行くのであり、それがとげられる期あると思えば……」

「御意、楽観いたされます」

この時勘助が例によって、艶麗の町娘の姿で出て来た。

「服部様のご兄妹、ご機嫌うかがいに参られました」

「おおそうか、通すがよい」

範之丞と織江とがはいって来た。

三

「二人ながら肉づいて、見るごとに健康そうになって行くの」冬次郎は愉快そうにいった。

「範之丞殿お祝い申す」と、貝十郎がにこやかにいった。