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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页

青空文庫

(宝の山に入りながら、手を空しゅうするというあいつだな)

織江の窶れてかえって病的に、美しく見える姿を見ながら、そんなことを九十郎は思うのであった。

「織江殿、その通りなので、今回の事件はそなたの美貌が、原因となっておりますので」

ジワジワと九十郎はやり出した。

「そなたが美貌であられたにより、拙者が煩悩をおこしたまでで、そこでそなたを口説いたところ、見事にことわられてしまいました。で復讐したまでで」

無精髭の生えている頬から※(「臣+頁」、第4水準2-92-25)を、掌でソロソロ撫でながら、上眼を使って織江を眺めた。

ふっくりとした豊かな胸、碗形をしたなだらかな肩、象牙を思わせる滑らかな頸、いかにも処女らしい織江であった。

「こうなった以上は織江殿……田沼殿によってか拙者によって……どっちみち、ハッハッハッ、どっちみち……厭な思いを味わわねば……これは十分そなたにおいても、ご覚悟なされねばなりませぬぞ」

こういって来て九十郎は、

(俺はこれまでいろいろの女を……しかしここにいる織江のような……いや全く立派なものだ! ……処女というやつ、美しいものだなア)