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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页
九
と勘助は思ったが、
「借家さがしに参りましたもの、無断で雨戸をあけまして、はいりましたは無調法、どうぞお許しくださりませ」
と、長い袖を胸へ抱いていった。
九
「女かえ、それとも男なのかえ」
お吉はグッと突っ込んだ。
「え、何んでございますか」
「お前さん男なのか女なのかと、こう妾ア訊いてるのさ」
「まあ何かと存じましたら、ホ、ホ、ホ、そんなこと。……」
「というセリフは通らないね」
「…………」
「背後に立って聞いていりゃア、お前さんすっかり男の声で、化物と話していたじゃアないか」
「化物?」
「そうさ、化物ぐらいのものさ。……気を狂わせている女だからね」
「道理で妾はいって参りますと、若い娘さんが独り言をいい、ままごと遊びしていなさいましたので、つい妾も面白くなり、男の声色など使いまして……」
「相手になっていたのかえ」
「あい」
「そうかい、なるほどねえ、そういわれりゃア筋が通る」
「それにいたしましてもこんな空屋に、あのような狂人の娘さんが、一人で住んでいなさんすのは?」
「不思議だろうね、妾にしても不思議さ。……あたしゃ隣家のものなんだが、いつからともなしにこんな空屋へ、あんな狂人が舞い込んで来て、行きなといっても行かないので、かかりあいになるなア厭だけれど、さりとてうっちゃって置けもせず、干乾しにしちゃア可哀そうだと、お飯