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みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

04 火の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页

青空文庫

三

「着けぬわい」

と、口吻を真似していう。

七名の陸の顔は、湯気を立てているかと思うように、白い息を吐いて、

「よしっ、着けぬとあれば、先の船着場で待つが、その船の中に、小猿を連れた前髪の青二才がいるであろう。恥を知るならば、舷へ立てといえっ。もしまた、其奴を逃がした場合は、乗合いの者残らず、関り合いとして陸へ引きずり上げるから左様心得ろ」

三

三十石船の中の騒めきが、陸から眺めていても手にとるようにわかった。さあことだぞと色を失った様子なのである。

岸へ着けたら何か始まるにちがいない。陸を歩いている七名の侍は、そういえば皆、袴をくくりあげ襷をかけ、刀に反りを打たせている。

「船頭、返事をするな」

「なにをいうても黙っておれ」

「守口までは着けぬがよい、守口へ行けば川番所のお役人がいるで」

客は口々にこう囁いて生唾をのんでいた。先に減らず口をたたいた男などは唖みたいに眼をすくめた。陸と川の中との隔てがなによりの頼りであった。

陸の七名は、船脚と並行してどこまでもついて来た。しばらく黙って見ているのは、こっちでどう出て来るかを待っているらしい。しかしいつまでも答えがないので、