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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
と、従いて行こうとすると、ふだんはいいが、恋には邪魔物に扱われて、
(いいえ、私は武蔵様に、少し二人きりで話したいことがあるのだから、城太さんは、夜が明けてから、なるべく悠っくり五条大橋に後からお出で。――だいじょうぶ、きっと、城太さんが来るまでは、武蔵様とあそこで待っていますから)
といって、一人で先へ出かけてしまったのである。
べつに僻んだり怒ったりはしないが、城太郎も決していい気持ではない。彼にも、明け暮れ共にいるお通の気持ぐらいは、もう解釈できない年頃ではない。男と女の持ち合う感動とはおよそどんなものかということは、彼自身も、柳生の庄の旅籠屋の小茶ちゃんと、馬糧小屋の藁の中でなんという理もわからずに悶掻き合った体験がある。
その体験から割り出しても、大人のお通が泣いたり沈んだりしている平常の様子は、彼にはただ不可解で、おかしくって、擽ぐったくて、理解も同情も持てなかったが、今、武蔵の胸へすがって泣いている者が、そのお通でなくて、朱実という案外な女性であったことを眼で見ると、城太郎の分別は、俄然、憤りに似たものを持って、
(なんだ、あんな女)