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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
二
「また差し出口かよ、おぬしは男のくせに甘うていかぬ。又八には父親がないゆえ、この婆は母であるとともに、厳しい父親でもなければならぬのじゃ。それゆえわしは折檻をしまする。……まだまだこんなことで足ろうかいの。又八ッそれへ直りゃい」
自分も大地へ畏まって坐りこみ、子へも、大地を指さしていった。
「はい」
又八は、土にまみれた肩を起して、悄然と坐り直した。
二
この母親は怖かった。世間の母親なみ以上の甘さもあったが、すぐご先祖様を持ち出すので、又八は頭があがらないのであった。
「つつみ隠しをするときかぬぞよ。関ヶ原の戦へ出て、おぬし、あれ以来、何していやった。婆の得心がまいるまで、つぶさに話しゃれ」
「……話します」
隠す気は起らない。
又八は、友達の武蔵と戦場から落ちのびたこと――そして伊吹のあたりに潜んだこと――お甲という年上の女にかかって、数年のあいだ同棲して苦い経験をし、今では、悔いていることなど、すっかり話してしまうと、胃の中の腐っている物を吐き尽したように、気が軽くなった。
「ふウむ……」
と、権叔父が呻くと、
「あきれた子よの」
と、隠居も舌を鳴らし、