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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
美少年
一
……」
と隠居はやっと気がすんだらしく、先刻から怺えていた氷のような大地から身を動かしかけたが、
「ア……痛々々」
「婆、どうしやった」
「冷えてかいの、腰が急に吊ってこう下腹へさしこんで来ましたわい」
「これやいかぬ、また持病を起してか」
又八は、背を向けて、
「おふくろ、すがりなされ」
「何、わしを負うてくれる。……負うてくれるか」
と、子の肩に抱きついて、
「何年ぶりぞいの、叔父御よ、又八がわが身を負うてくれたわいな」
と、欣し泣きに泣くのであった。
母の温い涙が肌にとおって来ると、又八も何か無性に欣しくなって、
「叔父御、旅籠はどこか」
「これから探すのじゃ、どこでもいい、歩いてくりゃれ」
「合点だ――」
と、又八は老母の体を弾ませて歩きながら、
「ほう、軽いなあ、おふくろ。――軽い、軽い、石よりも軽いぞ」
美少年
一
藍や紙が積み荷の大部分であった。ほかに禁制の煙草も船底にかくしているらしい。元より秘密だが、においで知れる。
月に何度か、阿波の国から大坂へ通う便船で、そうした貨物とともに便乗している客には、この年の暮を、大坂へ商用に出るか、戻るかする商人が八、九分で、