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みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

04 火の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页

青空文庫

七

「出来たって、そんな莫迦な芸を私はやる気になれぬ。――あなたは、それを私にやらせようという肚だろうが」

「でも、京流吉岡を、眼下に見るほどな自信のある腕なら」

「吉岡をくさしたことが、あなたの気に入らなかったとみえる。あなたは、古岡の門人か、縁者か」

「何でもないが、京都の人間だから、京都の吉岡を悪くいわれれば、やはりおもしろくはない」

「ははは、うわさですよ、私がいったわけじゃない」

「若衆」

「なんです」

「生兵法という諺を知っているか。将来のため忠言しておくが、世間をそう甘く見すぎると、出世はせんぜ。やれ、中条流の印可目録を取っているの、飛燕を斬って、大太刀の工夫をしたのと、人をみな盲とするような法螺はよせ。よいか、法螺をふくのも相手を見てふくのだぜ」

七

「私を、法螺ふきと、仰っしゃったな」

美少年が、こう念を押すように突っ込むと、

「いったがどうした」

藤次は、反らした胸を、わざと相手へ寄せて、

「おまえの将来のためにいってやったのだ。若い者の衒いも、少しは愛嬌だが、あまり過ぎると見ぐるしい」

「…………」

「最前から何事もふむふむと聞いているので、人を舐めてつい駄ぼらが出たのだろうが、実は此方こそ、吉岡清十郎の高弟、祇園藤次という者だ。