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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

金の十字架

長者は奥へはいって行った。三人の女も鳰鳥も自分の室へ引き取った。あたりはにわかに静かになった。おりからあちこちの遊女の室から、品のいい、なまめかしい流行唄が、自分の不幸を訴えるかのように、哀々とした調子で聞こえて来た。

※(歌記号、1-3-28)人買い船の恐ろしや、どうせ売らるる身じゃほどに、静かに漕ぎやれ勘太殿。

金の十字架

おりから射し出た十六夜の月を、茫然窓から眺めながら鳰鳥は室で考えていた。

「私は何者の子であろう?」いつも考えるこの考えを今も考えているのであった。

彼女を育てた老婆のお霜を、彼女は母だと思っていた。千曲川の岸の篠井の里で、母だと信じて老婆のお霜に彼女は忠実しく仕えて来た。二人の生活は貧しかった。お霜は近所の人達の走り使いなどに頼まれて、それで生活を立てていた。一間しかない小屋のような家、家の周囲には畑があって野菜などがわずかに作られてあった。大根、かぶら、それらの野菜が、二人の平素の食料であった。そういう貧しい中にあっても、お霜は決して鳰鳥を――しかし彼女はその頃は鳰鳥と呼ばれてはいなかった。彼女は千曲と呼ばれていた。それでお霜はその千曲をそういう貧しさの中にあっても、決して不自由をさせなかった。