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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
木曽の没落は眼前にありと、さてこそ今夜忍び入り、奥方を攫わんとなしたるところ、恨み重なる三太夫、汝のために見現わされ、かく囲まれし上からは、吾の命数極まったり、心まかせに討って取れ」
「さては汝は世に名高き御嶽冠者の手下よな! 実に盗人には似合いの主人、こう知る上は尚一層汝の命は助け難し。――かねての用意いざ方々!」
声を掛けるを合図にして、火薬の匂い鼻を突き、鉄砲を担いだ武者一団、ムラムラと庭上にあらわれた。その筒口は一斉に五右衛門の胸もとを狙っている。
一瞬の間に大盗の命、空に帰するかと思われたが、忽然虚空に声あって、孤鶴銀漢に啼くかのよう、哈々哈々と響き渡り、声ある空の一点から一団の火焔渦を巻いて、地上へ落ちると見る間もなく、五右衛門の姿は焔に包まれ、飄々翩々空に上ぼり、天主を越えると思ったが、忽ち空より声あって、
「お爺さんお爺さん、三太夫殿」
「残念!」と三太夫は空を睨み、「吹矢のお三に瞞されたか!」
「そうじゃそうじゃお爺さん! 吹矢のお三が吹筒に乗って、五右衛門を助けに来ましたわい。焔を纏った吹筒は竜じゃ! 一瞬千里を翔けて見しょう。矢でも鉄砲でも届かばこそじゃ」