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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
と見えて三、四人が、四本立っている御柱のその一本を指しながら窃々噂しているのであった。
「噂に聞けば、力柱を、引き抜いた者があったなら、明神様はその者へ、力をお授けなさるという、夢枕を里人に立てたとか。もしもそれが本当なら、どうぞして柱を抜きたいものだが、我らのように非力では動かすことさえ出来はしない。と云ってこのまま立ち去るのもちと業腹に思われる。四人一度にかかったなら抜けないことはよもあるまい、一度にかかろうではござらぬか」
「なんのなんのこの四人がたとえ一度にかかったとて、貧乏ゆるぎもすることか、それに第一ここは霊地。軍神荒神のまします所ゆえ、そんな狼藉は禁物禁物、神罰のほどがおそろしい」
「そう云われればそれももっとも、さわらぬ神に祟なしとはこういうことを云ったものか、狼藉するのは止めるとしようか」
「陽も山の方へ傾いた様子、そろそろ歩くとしようかの」
「下諏訪までは一里の丁場、陽のあるうちに行けましょう。さあ歩いたり歩いたり」
旅人四人はこう云いながら、各自に菅笠の紐を絞め、明神の境内を出て行った。人のいない明神の境内は、寂々として物さびしく、木立を透して遥か彼方に、夕陽を浴びて錦のように打ち拡がっている諏訪湖の中に、高く羽搏く鶴のように、白々と聳える一個の城。