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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
右門と五右衛門
「お前もそこから出ておいで!」
「云うにゃ及ぶ、さあ一緒に!」
しかるにこの時、人の足音が、忽然として聞こえて来たので、男女の問答ははたと絶えた。
足音は次第に近寄って来る。孕石と力柱に挟まれた、境内の小径を悠然と通り過ぎようとする武士の姿が、星影に照らされて黒く見える。編笠をかむり両刀を佩き、武者修行らしい様子である。
ツ、ツ、ツ、と侍は、いかにも旅なれた足つきで、先へ歩いて行くのである。
右門と五右衛門
すると、この時、反対の径から、浪人姿の侍が、いくらか酒気を帯びながら、武者修行の侍と擦れ違ったが、思う所存があったと見え、自分の太刀の鐺をひねり相手の鞘へハタとあてた。
「待て!」と浪人は大喝した。
「これは失礼致し申した」
武者修行の武士は振り返り、仕掛けられた喧嘩をわざと避け、編笠に手を掛けて詫びるのであった。すると浪人はつけあがり、
「鞘当ていたして置きながら、失礼致したとは何んのことじゃ。いずれ所存があったればこそ鞘当て致したに相違あるまい。さ、その所存を申されい!」
「これは甚だ迷惑千万、鞘当てしたるは拙者ではなく、そう云う貴殿ではござらぬか」