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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
御柱宙に昇る
すなわち、拙者は弟じゃ!」
「ナニ、冠者の弟とな?」
右門は思わず飛び退さった。
「いかにも冠者の義弟でござる。冠者の弟と知ったからは、拙者を見遁がしはなさるまい。拙者もそなたを見遁がしはせぬ。いざ尋常に勝負致そう。と、このように申しても、二人の技倆は五分と五分、いまさら切り合いも変なものじゃ。いっそそれより力試し、ここにある柱とそこにある岩、金剛力で引き抜いたものが、勝ちにしようではござらぬか」
五右衛門は意見を云うのであった。もちろん、右門に否やはない。
「力試しとは面白い! 柱であれ岩であれご随意の方を、いざお手前からお選びなされい」
「しからば拙者は柱の方を」こう云って五右衛門は柱に寄り、両腕でグッと引っ構えた。
「しからば拙者はこの岩を」こう云って右門も手を掛けた。
「いざいざ手並みをご覧あれや」
五右衛門は一声叫んだが、口に唱うる秘法の呪文! しばらく瞑目すると見えたが、声と共に両の腕に引っ構えたる巨大の柱、一尺余り引き抜けば、根もとの地面八方に割れ、土煙りと共にユサユサ揺れ、そのままスルスルと力柱、宙に向かって昇って行く、遅く出でたる片割れ月は、柱の頂きに引っかかり、光芒蒼く利鎌の如く、夜嵐颯々と吹く中に、突っ立ち上がった五右衛門の姿は、悪鬼羅刹よりも物凄い。