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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
躊躇した。
修験者は無遠慮にジロジロと二人の姿を見廻わしたが大口開けて笑い出した。
「一人は艶かな色若衆、一人は裸体の雲助姿、いや面白い対照じゃ――何、山道に迷ったとな? この雪に野宿をしようとか? なかなか風流の心掛けじゃの。朽木の洞か岩窟か、あったら教えてくれというのか、よし引受けた、教えてやろう。拙者に従いて参るがよいわ」
さも横柄な言葉付きも、二人を怒らせはしなかった。時にとっての救い主、感情を害しては大変であると、数馬も武兵衛も恭しく彼の言葉に従った。三人は足早に歩き出した。修験者の足の早い事にはさすがの武兵衛も汗を流して息忙き走らなければならなかった。
「よいか、雲助に若衆殿、拙者の歩いた足の跡を、正確踏んで来るようにせい。一歩も横へ踏み込むなよ。それには深い訳があるのじゃ! よいか、横手へ踏み込むなよ」
修験者は小声でこう囁いた。誰かその辺に人でもいて、それを聞かれるのを恐れるかのように窃やかの口調で云うのであった。
やがてトップリ日が暮れた。闇が谷間を引き包んだ。わずかに雪の蒼白い光が四辺におぼめくばかりである。しかし修験者は意にも介せず歩み慣れた道を行くがように歩調を早めて進んで行く。