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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

この別天地の一画こそは、弓掛の部落と呼ばれている、数馬を初め右衛門や紋十郎達が住んでいる場所で、こう云う部落はこの谿谷中に幾百ヵ所となくあるのであった。弾正太夫の総べている部下は総数四千人とは云うけれど、これは直接の部下なのであって、この部下以外に間接の部下は若干あるとも想像が付かぬ。そして少なくともこの谿谷だけにも一万の人数は籠もっていた。

部下から取り上げる運上だけでも、十万石の大名以上の生活をするという弾正太夫は、容易のことでは部下の者達に姿を見せようとはしなかった。彼の館は金木戸川の水源の辺りに居を占めていた。山吹峠や桑崎山の斜面に高く石垣を畳み、櫓を設け濠を巡らせ、周囲を廻われば五里十町、正に堂々たる大城である。

この大城に詰めている者はいずれも彼の股肱の臣で、もっとも毎日交替に各部落からその組頭と副組頭とが伺候した。

そのお館の大城をこの別天地の中心として、数十里に拡がる谿谷の中には無数の部落があるのであったが、それはいわゆる自治体であって、組頭、副組頭のその下には百人長というのがあった。云うまでもなくこれらの者は上から少しの干渉もされず互選によって選び出されるのであった。