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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

響き渡る号笛

まして嫌な女ではない。これまでずっと久しい間愛し愛されて来た女である。この弓掛の部落でも二人の恋仲は知れ渡っている。右衛門、紋十郎の著しい不和が人の口の端に懸かるようにやはり口の端に懸けられて来た。

「兄の紋十郎とは敵同志でも妹のお吉とは情同志じゃそうな。どういう前世の因縁であろうぞ」

部落の人達はこう云いあって一つの不思議にみなしてさえいた。人の口の端に懸かっているだけに二人のこの恋は迂濶には破ることは出来なかった。物笑いになるということが何より恥ずかしく思われるからで。

「お吉さん泣くのは止めてくれ。泣いたってどうなるものでもなし……それに、ほんとうにお前には、どこと云って悪いところはないのだからな。悪いのはお前の兄さんの紋十郎という男なのだ。俺もこれまでは不和と云ってもただ何んとなく気の合わぬぐらいに思っていたが、今はそれだけでは済まされないような大悪不道の人間に成り果ててしまった上からは縁に連らなるお吉さんとも、もうこれまでどおり懇ろにすることは出来なくなった。とこう云っても事情を知らないお吉さんには解るまいが、お前の兄の紋十郎はな……」

右衛門はここで言葉を切り、朧ろの春の月影に仄めいて見える女の顔をしばらくじっと見守ったが、