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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

しかもあの方の命の大事!」

「何を馬鹿らしい。嚇したとてそれに驚く妾ではない! よくもよくも右衛門さんを、妾の手から奪ったな。弓掛の女の恋の怨み、どんなに強いか見せてやろう。この鎌喰って死ぬがよい!」

颯と打ち込む利鎌の光。ハッと島君は反わしたが、これも舞踊の利益である。

「さような女の怨みなど、恐れて恋が出来ようか。もうこうなれば二人の中、どっちか死なずば納まるまい。右衛門さんのお身の上、どうなるものか気にはかかれど、降りかかる火の粉は払わねばならぬ。そっちが鎌ならこっちはこれじゃ。喉笛刺されぬ用心しや」髪へ手を上げ笄を抜き、逆手に握って身を固めた。

人通り少い深夜の山に、闘う二人の恋の女! 風はあれど四辺寂しく、空には月さえ昇っていない。

死地に乗り込んだ右衛門と共に二人の女の運命こそ、風前の灯より浮雲いではないか。

嵐の夜

一人は鎌、一人は笄、お吉と島君とは恋と意地とで嵐吹き捲く山道を手探り足探りで命を懸けて闘っている。

今は二人とも物さえ云わぬ。ハッハッと呼吸を切らしながら合いつ放れつしているばかりである。

わけても島君の心の中は吹く嵐よりも乱れていた。