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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

虎狼の宮の鞭音

それは非常に残忍な一度聞いたら忘れられないようなきわめて特徴のある笑い声で、そうして葉末にはその笑い声が聞き覚えあるように思われた。その気味の悪い笑い声に続いてピシリという音が聞こえて来た。鞭で何物かを打っているらしい。と引き続いてヒイーッという人間の悲鳴が聞こえて来た。社殿の奥で何者か恐ろしい折檻でも受けているらしい。

葉末はゾッと身顫いしながら階段からハッと腰を上げたが気性の勝れた女ではありもしやと思う懸念もあってすぐに逃げ出しもしなかった。彼女はそろそろと足音を忍んで階段を上へ登って行った。狐格子の前まで来るとそっと顔を近付けて社殿の中を覗いて見た。

虎狼の宮の鞭音

「暁の鐘が鳴り出すのも、程遠いことではない。鐘の鳴るのが生命の切れ目だ。さあ、念仏でも申すがよいわ」

鬼王丸の四天王の一人、青竜二郎はこう云いながら鞭をピシピシと手で鳴らした。

虎狼の宮のここ内陣の灯火の光仄明るい中に、一段高い段の上へ、どっかと腰を掛けたまま残忍の白眼をギラギラ輝かせ、彼は嘲笑っているのであった。

彼の傍らには一人の若武士――すなわち神保市之丞が厳重に縄で縛められながら捨てられたように据えられている。