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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

絶体絶命

「私になびけと申されました」

「それからそなたは何とした?」

「私は厭じゃと申しました」

「すると、殿にはどうなされた?」

「私の手をお捉りになりました。それを私は振り払って、逃げて来たのでございます」

「…………」

右門はやにわに飛び上がった。それから酒宴の席を目掛けて狂気のように走り出した。

その時、正面の障子が開いて、一人の武士が現われた。

それは右門の父にあたる花村甚五衛門その人であった。

絶体絶命

「右門、どこへ参る! 暫時待て!」

甚五衛門は忽ち呼び止めた。

「ハッ」と右門は立ち止まり、そのままバッタリと平伏した。そして悲壮に云うのであった。

「父上無念でござります!」

「無念じゃ? 無念じゃと? 何が無念じゃ?」

「父上無念ではござりませぬか、殿には我ら花村家の代々の忠勤をお忘れなされて、無理難題をこの右門や山吹に申されるのでございます」

「殿が難題を申されると? すりゃ、どのような難題じゃな?」

「この山吹を某から奪い取ろうとなされます」

「それが難題じゃと申すのか? 何のそれが難題であるものか、ちっとも無理ではないではないか」

「すりゃ父上には殿の仕打ちを無理ではないと仰せらるるか?」