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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
甚五衛門はカラカラと哄笑した。それから粛然と云うのであった。
「と云ってもそち達若者にはこの方の申すことは解るまい。尚また右門、そちにとっては、いかに主君の命とあっても、可愛い許婚を取られては生きて行く精もあるまいし、それに山吹の身にとっても、末懸けた男と別れては、よも永らえてはおられまい」
甚五衛門はじっと二人の者を、思慮ありげに見守ったが、
「諸国は広い、木曽ばかりに、陽が射すものとも限っていまい。土地を見棄てて立ち去るがよいぞ」
「え」と右門は呆れたように、父の顔を下から見上げたが、
「これはお言葉とも思われませぬ。先祖代々お仕え致した木曽の館を振りすてて、遠い他国へ走るなどと、そのような卑怯忘恩の徒には、右門決して成りませぬ!」
「ほほう、立派な覚悟じゃな、覚悟ついでに山吹を殿のお側へ差し出すがよい」
「それは決して成りませぬ!」
「成らぬと申しても殿のご気象、山吹が館にいる限りは、そのまま許して置かれまいぞ」
「それではどうでも山吹を、殿に上げねばなりませぬか?」
「それが厭なら他国せい!」
「絶体絶命、この上は、山吹も上げねば他国もせぬ、腹切って殿をお諫め申す!」