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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
仰天致してござる
そうして首級の切り口からはポタリポタリと血が滴り老師の咽喉を濡らすのであった。
老師はハッと驚いたものの、満身の力を振り起こしがばとばかりに跳ね起きた。
とたんに首級が掻き消えた。と、同時に「ヒーッ」と泣き出した芳江姫の声を聞いた。
「姫! 姫!」
と声を掛ける。
「ご老師様!」
と叫びながら芳江姫は衾から擦り抜け老師の膝へ転び寄った。
「そなたも見たのかの、恐ろしい幻影を?」
「はい。それではご老師様も?」
「うむ、私も襲われましたじゃ」
仰天致してござる
「何、物の怪が襲ったと云うか?」
御嶽冠者はこう云いながら、自分の前に跪座っている筑紫権六の顔を見た。
「オースチン師と芳江姫を、鬼王丸めの亡霊が、昨夜深更に襲いました由にて鳳凰の間の方々は今や立ち騒いでおられまする」
「さようか」
と冠者は云ったまましばらくじっと打ち案じたが、
「そうしてご老師におかれては、ご不安らしく見えるかな」
「いえいえさすがにご老師だけは何ら驚かれたご様子もなく平然としておられまする」
「姫は驚いておられような?」
「人心地とてござりませぬ様子……」
「そうあろう」とまた打ち案じたが、「大切の賓客を驚かせて御嶽冠者義理が立たぬ。