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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
いかさま二人の旅の武士――天丸左陣と人丸左陣とが、木の間を縫ってやって来た。
「さあ来やがれ泥棒め! 矢でも鉄砲でも持って来い!」
才蔵は喜んで怒鳴るのであった。
此方二人は立ち止まった。
「さて人丸殿」
と天丸は、小さい声で囁いた。「向こうに見える窟の内に、二つの宝物があるのでござる。二人一緒に参りましょうかな?」
「いやともかくも拙者一人で最初様子を見ることに致そう」人丸左陣は元気よく云った。
「おおさようか。それもよろしかろう。では注意して参られるよう」
「心得申した」
と云いすてて人丸左陣は悠々と窟の方へ進んで行った。
近付くままに見れば一人の少年が窟の前に狼と一緒に坐っている。
「何んだ乳臭い子供ではないか。こんな子供を恐れるとは、天丸左陣とも云われまい」こう呟きながら人丸は尚悠々と進んで行った。
「これ、何者だ!」
とそのとたん大きな声が響いて来た。いやその声の鋭いこと! 左陣は思わず立ち止まった。そうして彼は考えた。
「なるほど、普通の子供ではないな。これは迂濶り油断は出来ぬ」
――で、彼は慇懃に、
「拙者こそは浪人にて人丸左陣と申す者。御意得たきことござりまして遥々参ってござります」