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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
「それは本当でございますか!」
思わず粂太郎は胸を躍らせ、グイと膝をいざり寄せ、
「仮りでなくて本当に、もしも私が恋い焦れたら」
云いながらお銀の手を取った。
お銀はその手を払おうともせず、
「はい、嬉しゅう存じます」
「おお嬉しいとおっしゃるか?」取ったその手を握りしめる。
「妾はずっと以前から焦れていたのでござります」
「それでは私と同じ事、一眼お前様を見た時から、あの恋しく思いまして、主人の金を持ちながら、ついうかうかと逗留し、……」
「…………」
「隙があったら心を打ち明け」
「連れて逃げてくださるよう願っていたのでござります」
「そうとは知らず一人心で、クヨクヨ思っていたことも、今では思い出となりました。もしお銀様!」
と屹と云う。
「はい」
と云って顔を上げる。
「たとえ私が泥棒でも……」
「ええ?」
「もうこう心を明かし合ったからは……」
「なんで妾が嫌いましょう」
「おお有難い有難い!」
「もしまた妾が傾城上がり……」
「ええ」
「阿婆擦れ女であろうとも……」
「いいや決して捨てはしない!」
とたんに廊下で足音がした。
駅路の夜は森然と更けた。
助左衛門家の裏木戸がこの時音もなく内から開き、二人の男女が現われた。