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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
別館の一室
別館の一室
「ううむ、そうか、よく知らせた。最初から怪しいとは感付いていたが、あんまり化け方がうまいので本当の使者かとも思って見たがそれですっかり様子が解った。それにしてもあいつら二人、何を目論んで俺の所へ、贋使者となってやって来たものか? 落ち着き払った態度と云い、眼の配り方体の固め、寸分隙のないところ、名ある奴らに相違ない。……新築の別館とは云うものの、言葉を変えれば捕虜蔵、あそこへ追い込んでしまったからは逃げようとて逃げる道はない。いずれゆるゆる詮議するとして、せっかくくれた土産物、俺の居間へ運ぶがいい」ズイと立つと廊下越し、自分の居間の方へ悠々と歩く。
やがてトップリ日が暮れて、山寨の夜がやって来た。季節は夜長の晩秋である。二千尺の黒姫山、夜が更けるにしたがって、寒気骨身に徹るばかりだ。ヒューッ、ヒューッと夜嵐が森の梢を鳴らして行く。オーッ、オーッと峰の方から獣の吠え声が聞こえて来たが、餌に饑えた狼に相違ない。カンカンカン、カンカンカンと、鐘の音が聞こえて来る。それを受けてチャンチャンチャンと、拍子木の音が響き渡る。非常を警める夜廻わりでもあろう。