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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
誠に整然として厳重である。
別館は四方吹き払いの小丘の頂きに立っていたが、今その別館の一室でヒソヒソ話し合っている男女がある。落合内記と松風とである。
「どうやら大分夜が更けたようだ」
「さすがは山奥、ゾクゾクと胴顫いするほど寒いじゃないか」
「いや全く寒いなあ、雪の頃が思いやられる」
内記はちょっと憂鬱になったが、
「それはそうと、オイお銀、あの地丸をどう思う?」
「ねえ人丸さん、本当を云えば、妾アあの男には感心したのさ」
「実は俺も感心した」
「五分の隙もないと云うのは、ああいう男を云うのだろうよ」
「俺らをどう思っているだろうな?」
「さあそいつは問題だね」
「贋物と思っているだろうか?」
「そう思えばそうも思われる」
「しかし進物の十行李には、さすがに嬉しそうな顔をしたよ」
「そこが泥棒の浅ましさでね」
「こっちは贋物の心弱さか」
「狐狸の誑し合い、考えて見りゃア面白いよ。お前は女だ狢と行け」
「オヤ狢かえ、色気がないねえ」
「その色気で思い出した」急に内記――いや人丸は、興覚めたような顔をしたが、「おおおお、お銀、済まねえぞ済まねえぞ。さっきお前は地丸の野郎へ厭に色眼を使ったが、この納まりはどうしてくれる」