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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

魚鱗の備え

何かの参考となろうも知れぬ。ご免!」と云うとタッタッと馬を陣中へ引き返した。

やがて貝の音が嚠喨と鳴る。それを合図に四方の陣が俄然運動を開始した。一面あたかも火の海のように前方一帯を埋めていた松火の火が速く速く西に向かって走ると見る間に、それが次第に一列となり、それに続いて他の陣が、同じく一列に隊伍を組み、後から後からと引き続く。その神速さ眼を驚かすばかり、忽ち魚鱗の備えとなった。と、第二の運動が法螺の音と共に行われた。すなわち蜒々たる魚鱗の備えが、ポツリポツリと千切れたかと思うと、一段二段三段四段、さながら梯子を組み立てるがように、横一文字を縦に組み十二段まで畳んだものである。ああ見事と思う間もなくまず最初の一段が鳴らす太鼓の音に連れてズンズン先方へ進んで行った。次第に早まる太鼓の音。それに連れて歩みも早まり直押しにドッと走ると見えたがグルリそれが右に反れた。あッと思うと既に二段目が同じ位置まで押し出している。とまたそれが右へ反れる。すると三段目がそれを補い同じ位置まで押した。こうして四段目五段目と十二段の軍勢が押し出し押し出し同じ位置まで押し出して行く。