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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
右京次郎も叮嚀に云った。
「お見受け致せば困難のご様子、心置きなく何んなりと、我らにご用命くださるよう、すぐに調え進ぜるでござろう」
こう常氏は親切に云った。
喜ぶと思いの外、右京次郎は冷淡に、
「いや困難はお互いでござる。……かかる戦国に産まれ合わせたからは、生命の不安、生活の危険、これはもうお互いでござる。目下も非常な窮境ではござるが、さりとてそのため死にもしまい。この困難を常と思えば別に不安もござらぬよ。ただし、戦争後のことであれば、負傷した者が十数人ござる。これの手当てだけお願い致します」
「心得てござる」
と常氏は、快くそれを承諾した。
「さて、これだけの人数を率い、今後は何んとなされますな?」やがて常氏はこう云って訊いた。
「さよう、遊説を致します」
「ははあ遊説? 遊説とはな?」
「昔、支那の孔子孟子、この世に平和を持ち来たらさんため諸侯に遊説致したようにな」
「で、生活の方面は?」
「遊説賃を頂戴します」
「で、貴殿の中心思想は?」
「自由、平等、人類愛」
「いずれも聞かぬ名目だが、富国強兵の方策かな?」
「いや、全然反対のものでござる」
「強兵策ではござらぬかな?」