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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
思うがままに苦しめて、そうして最後に嬲り殺しにし、木曽の館を滅亡してくれよう。
これが彼女の希望なのであった。
だが、彼女は、実のところ、現在の生活に飽き飽きしていた。阿諛と追従と軽薄との、凝り塊ったような殿中生活! 淫風はびこり肉の香漲り、息詰まるような貴族生活! 復讐の女神でありながらしかも本来根本においては清浄の処女たる彼女から見れば、そういう生活は耐えられなかった。耐えられない不快な生活が永年の間引き続いたのである。そこで「城をこっそり抜け出し、卑しい女に身をし、自由に二、三日遊んで見たい」という、こういう希望の起こって来たのは、当然なことということが出来よう。
しかし、そうはいうものの、彼女のような位置にある者が、こっそり城を抜け出して気ままに遊ぶというようなことは、絶対に不可能というべきであった。
何より恐ろしいのは内乱であった。不思議な彼女の圧力が上から抑えているがため、城中無数の男女どもは穏かに生活しているものの、一旦彼女が不在になったが最後、その無数の男女の中には、彼女に不平の者もあり、それが俄然一斉に立って、鳰鳥一味の者どもを一掃蕩しないものでもない。