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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

……まさか老人の山津主が……」

「そんなお方でもございません」

姫は考えに沈んだが、

「それはそうとあなたに対して、いったいどんなよくないことを、その男はしたのでございますの?」

「あの妾を失礼にも、寝部屋へ連れ込んだのでございます。……あなたのおいでが遅かったら妾の体はその人のために……」

「おお寝部屋とおっしゃいますと……それではさっきのあの寝部屋へ?」

「はいそうでございます」

「その寝部屋にはお父様と……」

「はい、あなたのお父様と……」

「近習のものがいたばかり……」

「その近習の人達は、笑って立って見ておりました」

姫の顔色は紅をさした。

「それではもしやお父様が?」

「それゆえ妾は申し上げにくいと、申し上げているのでございますよ」

姫の眼へは涙が溜った。それはいじらしい光景であった。

鳰鳥は気の毒でならなかった。で、黙って見詰めていた。

と、姫は立ち上がり、つかつか部屋の外へ出ようとした。

「どちらへおいででございますか?」

「はい」と姫は振り返ったが、「父を叱りに参ります」そういう声には自信があった。「父は妾を愛しております。そうして少し煙ったがっております。