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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
換え玉を掴んで
換え玉を掴んで
「まあ恐ろしくザワザワすること」
鳰鳥は呟いて耳を澄ました。
彼女は姫の寝室の氈の掛かった寝台の上に、疲労れた体を横仆えていた。
「美麻奈さんはどうしたろう? いつまで待っても帰って来ない」彼女はちょっと不安になった。「なんて無邪気な性質なんだろう。態は立派な娘だけれど、心は全然赤ちゃんだよ」微笑みたいような心持ちをもって、彼女は姫のことを考えた。
姫は帰って来なかった。城内は益※(二の字点、1-2-22)騒がしくなった。不安の気が感じられた。
「おおそうだこんな時に、遠観術を験してみよう」
彼女は施法に着手した。寝台の上へ起き上がり、膝を揃えて端坐した。それから軽く瞑目し、咒文を唱え印を結んだ。
咒文を唱え印を結ぶ! これは大切なことであった。咒文とは真理の精粋を、短いリズミカルの文にしたもので、咒文の解剖を行ったら、大部の書籍さえ出来るのであった。印を結ぶということは、自己催眠の手段であった。微妙を極わめた複雑の印を、繰り返し繰り返し結ぶことによって、分裂した精神を集めることが出来た。
遠観術すなわちクレボヤンはまた、今日のいわゆる催眠術要素を、きわめて多量に持っていて、千里耳、縮地法を加味したものであり、千里を離れた目的物の、情況を知るところの術であった。