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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
「美麻奈さんを助けるには及ばない。あのままで美麻奈さんは幸福なのだから」
こういうことを思いながら、鳰鳥が山道を歩いていたのは、その夜の真夜中のことであった。
彼女は梟帥の小屋の前に立って、婚礼の様子を見ているうちに、そういうことを感じたからであった。
「妾はこれからどうしよう」
麗人国へ帰って行く必要はない。獣人国に止どまっている必要もない。
「木曽の館へ帰って行くことにしよう」
木曽へ帰って行くとして、では彼女はこの険難な、駒ヶ岳の山道を一歩一歩、辿って行かなければならないのであろうか?
いやいやそんな必要はなかった。今の彼女は倶係震卦教の、立派な体得者であるのだから、尺地術を念じ行いさえすれば、易々として木曽へ帰って行くことが出来た。
間もなく月夜の駒ヶ岳の、大自然をあたかも黒い魔のような物が、疾風のような素早さで、走って行くのが見てとれた。
尺地術を行った鳰鳥の、それは走って行く姿であった。
山の上にある麗人国も、谷の底にある獣人国も、見る見る彼女の背後になった。水藻水泡の住んでいる双玉の原も背後になった。
間もなく木曽へ着くことであろう。
しかし彼女はある地点まで来た時、行手に一つの人影を見た。