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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

なかった。

ともあれ、こうして平和の木曽は、忽ちのうちに騒がしい、不安な天地に変わったのである。

洋々と流れる千曲川も、冬は氷にとざされて、その水色さえ黝黒く、岸の枯蘆もおおかたは折れて、風の強さが思われる。

その千曲川の堤の上に、七、八人の武士が焚火を囲み、人通りもない夕暮れを、声荒々しく語っている。稲荷山に近く、篠井にも近い、吹きっ曝らしの堤である。

「こう寒くては俺達の商売も、まず上がったりという訳だな」

伊賀袴を穿いた大髻の中年の一人がこう云うと、

「そう諦めたものでもない。案外こういうアレの日にいい椋鳥がかかるものだ」頬髯の黒い大男がニヤニヤ笑ってすぐ答えた。

するとその中での頭領らしい、猪の皮の胴服を一着なし、銅金造りの陣刀を帯びた、人品骨格卑しくない、四十前後の肥大漢が、カラカラと大きく笑いながら、

「たとえ寒かろうが寒くあるまいが、吾らの商売には変わりがない。獲物のあった日がよい天気で獲物のない日がシケなのじゃ」

「ところでこの頃はそのシケの日が長くつづくではござらぬか」

中での若い侍が愚痴を零ぼすようにこう云った。

「吾らばかりがシケではない。