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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
突然旅の侍は、さも笑止げに哄笑した。
「人もあろうにこの俺を賊の張本御嶽冠者の手下にしようとは片腹痛し! 汝らそもそも某をいかなる者と思いおるぞ! 汝らが敵と付け狙う木曽の館とは切っても切れぬ。汝ら、名ぐらいは聞きおろう、木曽の家中にその人ありと隣国までも聞こえたる、花村甚五衛門宗房こそ、すなわち、拙者の父なるわ!」
「ええッ」と野武士は顔見合わせ、一度に颯と飛び退がった。
「同姓、右門とは我が事なるぞ! それのみならずこれなる女子、拙者の妻の山吹こそ、同じく木曽家の執事の一人、洞院左膳の娘なるわ!」
右門はまたもや哄笑した。そして凛々しく云いつづけた。
「吾、故あって去年の秋、父に勘当されたを幸い、妻と二人で諸国を廻わり、国々の様子、城の強弱、または武将の優劣などを、窃かに詮議致すというも、みんな木曽家のためなのじゃ。すなわち、合戦とも成ったる際に、まず知りたきはそれらの事――しかるに吾ら巡り巡って、山陰あたりまで来たれる時、木曽家と伊那家との争いを知り、尚また、賊将御嶽冠者が徒党を率いて山を下り、木曽家に寄せると聞いたれば、妻を促がし夜を日についでここまで取って返して見れば、吾をさようの者とも知らず現在敵の御嶽冠者の味方になれとは事可笑しや! やおれ、汝ら鼠賊の輩、このように明かした上からは、やわか吾らを