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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页
九十郎は譫言のようにいった。
「そうさな」と意次も審かしそうに、「宴の席には姿なかった。……誰だろう、わしには解らぬ」
「やはり遅れて参られた、賓客達でござりましょう」貝十郎だけが少しも動ぜず、そう悠々とした声でいった。
「弁慶といい、あいつらといい、変な人間が今夜はいる。……呼びもしなかった変な奴らが!」
「殿」と貝十郎は勇気づけるようにいった。「私がついておりまする。何事も大丈夫にござります」
三人はソロソロと先へ進んだ。
十数間歩いたところで、三人のものは振り返って見た。
と、弁慶と羽衣と熊坂とが、一つ所に塊まって、交叉点に佇んで、囁きながらこっちを見ていた。
「貝十郎、彼奴ら、組んでいるぞ!」
「組んでおります! 党をなしております!」九十郎も上擦った声で、「そうして私達を狙っております!」
「平戸氏! はしたないではないか! ……殿、ご安心なさりませ、貝十郎をお信じくださりませ。……貝十郎ついております!」
書院造りの母屋の一室――侍女などの控える部屋の一つに、お浦が道成寺の花子の姿で、壁にもたれてボンヤリ坐り、その横に警戒でもするように、甲賀忍び衆の仮装をした、白須源吾が附き添っているところへ、貝十郎がはいって行ったのは、それから間もないことであった。