轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页

青空文庫

狂女ながらも逢えた嬉しさは、正気の女と変わりないが、うっとりとした潤んだ眼で、お浦は家治の顔を見詰め、握られている手に力をこめ、家治の言葉の一句一句に、それを締めそれを緩めた。

そうして、

「上様、上様」

とばかりいった。

恋いこがれていた心持ちを、ただその言葉とその動作とだけで、告げ知らせるより他にはない、無策の無心の狂女だからであった。

シャンデリアの光に髪に差してある、銀簪のピラピラが、燐火を燃やしているように見えた。

「誰もが本当のことを話してくれない、だからわしにしても誰の耳へ、本当のことを話していいか見当がつかなくて困っているのだよ」

穏やかといえば穏やかに見え、意気地がないといえば意気地がないようにも見える、眼尻の垂れた細い眼に、家治は涙さえ溜めていた。

女と酒と不摂生と、抑圧された精神とで、家治の脳は久しい前から、低下を告げているのであった。

口の端には泡が吹かれていた。

「越中へ頼むのがいいのだが、越中とばかりは逢えぬからのう。誰かがきっと側にいるのだよ。……だからお前へ頼むより他は……」

酔いも廻り切っているらしかった。

感情ばかりが先に立って、理性が失われているようでもあった。