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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页
「ほんとか!」
とお吉は顫え出した。
「そりゃアいつから※(感嘆符疑問符、1-8-78) ……さあ話して!」
「又助と俺と九十郎とで、秋社へ梅見に行ったなア、半月ほどの前だったかしら。……その時藩の悪侍どもが、これも梅見に行っていたお浜の、厭がるやつを無理に呼んで、酒のお酌をさせたのをはじめに、悪いふざけ方をやり出したので、そこは廃れても九十郎だ、武技にかけちゃア凄いものさ、二、三人取って投げつけて、お浜を助けたのが縁となりだ……」
「その娘と出来たのかえ?」
「出来た出来ねえそれどころか、養子に貰ってくれなかったら、妾ア死ぬと大変な執心――その娘の執心よ。……箱入り娘は初心いからなあ。……そこへつけ込んで細工をし、からくっているのが又助だ。……そこでとうとう九十郎め、今夜楢屋へ出かけて行き……」
「そんなに進んで……もう養子に……」
「というところまではまだまだだが、主人の佐五衛門と表立って、会うというところへまでは進んでいる。……そこまで漕ぎつけりゃア大丈夫だ。何んといっても九十郎は美男、人品骨柄も卑しくねえ。……馬子にも衣裳髪形、借り着でも何んでも晴着をひっかけ、押し出して行ったらあの男、立派な若殿に見えるからなあ」