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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页
「これも不問? 変だのう」
刺すような眼で冬次郎は、貝十郎の顔を見詰めた。
(油断はならぬ)
とそう思った。
「戸ヶ崎」と冬次郎は熊太郎へいった。「貝十郎の様子ちと変だの」
「ちと変にござります」
どういっていいか挨拶に困る――そうは思いながら熊太郎は、冬次郎の言葉に合槌を打った。
「いつもは何事も天空海濶に、行動される十二神氏が、今回に限りものを隠される、ちと変にござります」
「どうやらやはり十二神様には、懐中に十手お持ちのようで」
勘助までが口を出した。
と、貝十郎はその勘助へ、ジロリと横眼を走らせたが、
「お勘、何んだ、ビクビクするな。……そう懐中が恐ろしくば、遠慮はいらぬ、探ってみい。……いや気味の悪い変性男に、鳩尾の辺探られぬ先に、俺よりよいもの見せてやろう」
いって貝十郎は懐中へ手を入れ、一葉の紙を取り出した。
「そこにおられるは戸ヶ崎先生の、ご門弟のお一人と見申した、卒爾ながらこれをお読みくだされい」
清三郎の前へ紙片を置いた。
十四
和歌らしいものが書いてあった。
そこで清三郎は声高に読んだ。
「きられたは、ばか年寄と、きくとはや、山もお城も、さわぐ新番。