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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页

青空文庫

そこで相談でもしているらしく、高い声になったり低い声になったり、笑ったりシーンと静かになったりする、そういう声々が聞こえて来た。

(不作法のここの門弟どもであろう)

兄妹ながらそう思った。

と、こっちへ歩いて来る、一人の足音が聞こえて来たが、すぐに間の襖が開いて、又助の笑顔が現われた。

「お待たせしましたな、恐縮恐縮、が首尾は上々吉で」

坐るとべらべら喋舌り出した。

「九十郎めおりましたよ、さよう家に、自分の家に。……で、拙者言を設け、湖畔へ今夜引き出すようしました。町内で切り合いいたしましては、先刻も申した彼奴の味方、無頼漢や藩の悪侍どもが、聞きつけて助太刀いたしますからな。……どうでも湖畔人気ないところへ、おびき出さねばなりませぬて。……それにはもう一つ……」

といって来て、又助は得意そうに肩をゆすった。

「これで拙者にも門弟があります。その門弟へ拙者命じ、貴殿方お二人の後見するよう、いたさせましてござりますよ。ただ今道場でそうしましたので。その上拙者が後見いたす。鬼に金棒大丈夫でござる。……おお、そろそろ時刻でござる。九十郎めが夜釣りしようと、湖畔へ出て行ってまだかまだかと、拙者の参るのを待っているでござろう。