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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页
お信じしたればこそにござります。……田沼様はご老中、ことにはあれほどの大人物、風雅の友として貝十郎を、お目かけくだされはいたすものの、何んでご政事の枢機などを、お漏らしくださることありましょうや。……が、わたくし案じまするに、田沼様今回の信濃への旅、その目的といたすところは、あまりにも無理解の人々の、この頃加わった圧迫の手、非難排擠陥穽の手を、しばらく弛め避けんがためと。……とまれ田沼様の現状は、わたくし脇本陣楢屋において、殿に言上いたしましたごとく、窮鳥、窮鳥にござりまする!」
「いうな、いやいや、ナーンの彼奴、窮鳥ではない窮鼠じゃわえ! 猫を噛むという窮鼠じゃわえ! ……これ貝十郎よっく聞け! 今も汝がいったごとく、尋常に浅間へ参る彼なら木曽街道を通るがならい、しかるにわざわざ遠道かけて、甲州街道から入り込んだは、彼の腹心甲府御勤番支配や、諏訪因幡守や牧野遠江や、岩村田侯と密々に逢い、姦謀計らんためなのじゃ! ……その姦謀こそ旅の目的、いえ語れ貝十郎!」
「…………」
「いかにも汝申せしごとく、逃げ水屋敷の乱闘の際に、将軍家を担わせ参らせたは、お助けしよう以前よりの手筈、さればあの夜明けぬうちに、将軍家をひそかに帰館参らせた! その余の存念推察して邪魔立てせざりし汝の好意――その好意もて貝十郎、田沼の旅の