轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

「東京日日新聞」1933(昭和8)年11月7日~1934(昭和9)年4月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,184 字 · 379 页

青空文庫

、蹴上げて立てた土煙りらしい。

「何んと申してよろしいやら……」

口籠りながら範之丞はいった。

「あなた様にそのような憂き目を見せ……命助けられたそればかりか……そのような憂き目をあなた様に見せ……食って行かねばならぬとは……いえいえいっそ食わずにいましょう! ……餓えていっそ死にましょう」

ふと二本の指の先で、範之丞は眼頭を抑えた。涙を見せまいとしたのである。

とみに気が弱くなった彼であった。

無理もない理由があった。

お吉は命の恩人であった。そのお吉があの山の郷で、一揆衆と偽称した浪人どもに、残酷なはずかしめを受けたばかりか、有金をさえ奪われた。そればかりでなくここへ来る間に、幾度となく幾人にとなく、同じ目に逢わされた。一揆とそうして浅間山が、またもや爆発するらしく、灰を降らしたり鳴動するので、佐久一円の人心が、戦々とし兢々とし、他面兇暴となり自暴自棄となり、社会の秩序も失われたため、良民さえも暴徒化した。そこを狙って悪浪人や、無頼の遊び人や博徒などが、正義顔をして一揆衆などと称し、往来の諸人を迫害した。で、そういう悪辣の徒に、二人は随所で苦しめられたのである。